漆が織りなすマスターピース

一人ですべての工程を担う、
仙台堆朱製作所の3代目・南一徳さん。
定番の製品づくりのかたわら、
さまざまな技法の探究や
実験的な取組みも行っています。
そこから生み出されるのは、
まさに漆の芸術品。
ひたすらに漆と向き合い、
手間ひまをかけて育まれた、
珠玉のレアものをご覧あれ。

堆透・堆彩

20年ほど前から南さんが取組んできた、素地なしで、漆そのものを塗り重ねて器に仕上げる“堆透(ついとう)”と“堆彩(ついさい)”。
色づけしていない漆を用いたものが堆透、色とりどりの漆を使ったものを堆彩と読んでいます。
日々漆を塗り重ね板状の固まりをつくって、成形・塗り・研磨を繰り返し、でき上がるまで10〜15年という長い年月を要するのだそう。
陶器の“木の葉天目”にヒントを得たと言う「堆透 輝(き)」は、艶やかな盃の中に本物のもみじの葉が塗り込められた趣深い逸品。

陶胎漆器

陶器に塗りをほどこした“陶胎漆器(とうたいしっき)”。色漆を何層にも塗り重ねて研磨することで、美しく多彩な模様が浮かび上がります。
2011年には「陶胎漆器 盃」がグッドデザイン賞に選出されました。
「陶器に漆を定着させるのは難しいので、素地をつくってくれる焼物屋さんの協力を得ることも不可欠です」と南さん。
親交がある堤焼乾馬窯や田尻大沢窯、安養寺窯といった地元の窯による素地が用いられています。

木地

素地を選ぶ際、南さんは、「定番化したものより、ちょっと変わった形に魅かれる」そう。
知り合いの職人さんが試作品としてつくったものの破棄されようとしていた品々を譲り受け、塗ってみることも多いと言います。
こけし工人・木地師の佐藤正廣さんがサンプルとして挽いた棗(なつめ)は、黒漆を内側に塗ってアクセントに。
今野幹夫工人が試作したこけしは、岩出山しの竹細工の耳かきが内蔵されたオブジェに変身です。