仙台張子とは
仙台で愛され続ける"伊達"な青いだるまさん
暮らしに「福」と彩りを授ける。
ハンサムな顔立ちの青いだるまや仲睦まじく寄り添う夫婦福助、愛らしいすずめ、表情豊かなお面の数々。眺めているだけでほっこりと心が和む仙台張子は、天保年間(1830~1844年)、庶民の心のよりどころになるようにと伊達藩藩士・松川豊之進が創始し、作られてきたと伝えられる。昭和60(1985)年に宮城県の伝統的工芸品に指定。代々仙台張子を制作する「本郷だるま屋」は初代・本郷久三郎が松川氏に弟子入りし、その技術や木型を継承している。
仙台張子の代表格として作られているのが青いだるまとして名をはせる「松川だるま」。一般的にだるまと言えば体が赤く塗られ、目は書き入れず空白のままという姿でお馴染みだが、仙台では青いだるまが当たり前。顔のまわりが群青色で縁取られ、胴体に宝船や福の神が鎮座する色鮮やかなだるまは、古くから仙台庶民に縁起物として親しまれてきた。
初詣や*「どんと祭」の折に神社の参道の露店で授与品としてずらりと並んで売られている風景は仙台人にとっては馴染みの深いもの。信仰の対象として求められただるまは各家の神棚に祀られる。1年間神棚から家を見守ってもらい、毎年1月14日に行われる「どんと祭」で正月飾りとともに燃やして、新しいだるまを買って帰るというのが慣わしだ。七転び八起きにあやかって8体並べる家もあるという。
すっと通った鼻筋、絢爛な飾りを身にまとった「松川だるま」は他と一線を画すまさに“伊達な”逸品。そんな凛々しさの中にも、ほとんどの工程が手作業であるがゆえに醸し出されるやさしさとあたたかさがある。よくよく見るとそれぞれ顔立ちがちょっぴり違うのもご愛嬌。「たくさんの福があるように」そんな想いで一体一体心をこめて製作する作り手の気持ちが、手にとる人にじんわりと伝わってくる。
近年はライフスタイルやモノに対する意識の変化から、信仰対象としての存在とあわせて民芸品、工芸品としての嗜好の高まりを見せている「松川だるま」。時代の変化に伴って飾られる場所も変わってきた。神棚から、飾り棚やリビング、玄関へ。それでもだるまさんは、ぱっちり開いた大きな目で、今も昔も変わらず無病息災・家内安全を四方八方見守ってくれている。
*主に宮城県内各地の神社で盛んに行われている祭り。神社の境内で正月飾り等を焼く御神火にあたることで一年の無病息災・家内安全を祈願する。