全部で11系統ある伝統こけしのうち、宮城県には、5つの系統が存在しています。
遠刈田、鳴子、弥治郎、作並、肘折。それぞれの特徴をご紹介しましょう。
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遠刈田温泉を中心として生まれた系統。直胴に大きめの頭のシンプルな姿です。顔は上下のまぶたが描かれ、鼻は割れ鼻。胴体には、菊や梅、桜などをモチーフとした絵柄が施されることが多く、頭頂には赤い放射状の手絡(髪飾り)模様、さらに額から頬にかけて赤い花弁模様が描かれます。
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鳴子温泉を中心として発達した系統で、首を回すとキュッキュと音が鳴るのが最大の特徴。優しい顔立ちで、肩と裾が張っています。少しくびれた胴体には、上下にろくろ線、その間に菊の模様が施されることが多く、頭頂には、御所人形に似た前髪とふた束の髪、赤い髪飾りが描かれます。
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白石市の弥治郎集落を中心として発達した系統。さまざまな色の輪が描かれたベレー帽のような頭、胴には太いろくろ線と、襟や裾の部分に手書き模様が施されています。くびれたウエストも特徴的です。伝統こけしの産地で最も暖かい場所ゆえか、開放的で明るい雰囲気を持っています。
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作並温泉を中心とする系統で、“子どもが握りやすい”ことを重視したため、胴が細いのが特徴。こけしが玩具から観賞用になった大正時代から、台座がつくように。胴の模様は、蟹のように見えることから「かに菊」と呼ばれます。元はキツい顔立ちでしたが、時代を重ねるうち柔和に。
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遠刈田系、鳴子系の亜流として山形県肘折温泉を中心に生まれた系統。油絵のような色彩と強い個性を持つ顔立ちは、伝統こけし全11系統の中でもかなり独特です。鮮やかな黄色に立ち菊が描かれた胴、黒々としたおかっぱ頭と大柄の髪飾りは、一度見たら忘れられない強烈な印象を残します。