仙台竿とは
200もの工程を経て仕上げられる
政宗公が愛用したしなやかな継ぎ竿
藩政時代から今に伝わる伝統の仙台竿。何事にも「粋」を好まれた伊達政宗公が鮎釣りで愛用していたという、仙台ならではの伝統工芸品である。江戸時代後期から、遊びの文化として発展した釣りは、その道具である釣竿も時代とともに改良が加えられ、芸術品の域にまで達する逸品も生まれた。
材料となるのは、宮城県産の真竹や高野竹。仙台竿にふさわしい竹を伐り出すことに始まり、乾燥、削り、継ぎ、塗りなどの200にも及ぶ細やかな作業工程を経て仕上げられる継ぎ竿は、ふわりとしなやかな調子で「魚と争わない」のが大きな特徴だ。だから、大物がかかっても魚とケンカすることなく、スッと釣り上げることができる。さらに驚くべきは、竿が釣り人と一体化するということ。鮎釣りであれば、鮎の皮膚に針が刺さった感覚までもがその手に伝わり、海釣りであれば、どんな魚があたっているのかまで分かってしまうという。今仕上がっている竿は150年でももつほどに丈夫で、特に海釣竿と大物竿は頑丈にできている。仙台竿と一口にいっても、海釣竿をはじめ約8.5m15本継ぎの鮎の友釣り竿から、約1m弱12〜13本継ぎのタナゴ竿まで種類はさまざまだが、そのほとんどすべてがオーダーメイドである。通常は、半年から1年ほどで完成するが、その竿にふさわしい竹が見つからない限りは、制作されることはない。それでも「10年待ってでも欲しい」と、自分だけの竿の完成を待つ愛好家がいる。
江戸の昔から平成の今に至るまで、釣りを愛する人たちが垂涎する竿、それが仙台竿なのだ。