ほとんどが自家での一貫作業で行う
千葉家の藍染め


藍染めを行う工房では、藍建て(藍を染色できる状態にすること)する際に使う、藍の葉を発酵させた蒅(すくも)を徳島などの蒅を専門に作る藍師のもとから仕入れ、土中に埋めた藍瓶で藍建てをして染色しているのが一般的。そして、一度藍建てしたら、瓶を火で温めながら発酵を調整するため、年中染めを行うことができます。
しかし、「正藍冷染」を継承する千葉家では、蒅を仕入れることもなく、藍の種を撒き、育て、葉を摘み取り、蒅にして藍玉を作り、藍建てをする。その作業を一貫して行っているため、工程は一年を通して営まれ、染められる期間は人工的に熱を加えることなく藍が自然発酵できる気温に上昇する、6〜7月の間のたった1ヶ月半ほど。このわずかな期間のために、まさに藍とともに生きる一年を過ごしています。いずれの工程も天候や気温に大きく影響され、そして大変な手間がかかるもの。それでも藍から出でる、その年の美しい色を楽しみに、古くから伝わる純粋で素朴な技法を守り続けているのです。
手間ひまかける貴重な
千葉家の藍染めの一年
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4月に種からまいて育てた藍を8月初旬に刈る。根元を残して刈り取ってそのまま育て、9月中旬にも再び刈り取る。藍の花が咲く前が収穫の時期。
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収穫した藍をこきおろすように茎からはずし、葉だけを摘み取る。このとき、花芽近くの葉とそれ以外の下部の葉を選別しておく必要がある。
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藍こぎした藍の葉をシートに広げ、天日で乾燥。天候や気温にもよるが、少し水分が抜け、しんなりするまで30分程度乾かしていく。
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しんなりと乾燥させたあと、藍の花芽近くの葉は硬いため、工房の脇に据えられている石の上に置き、しっかりと叩いて繊維を柔らかくしておく。
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藍の葉を筵(むしろ)の上で揉みこむ。力を加えすぎないように加減が大事。汁気がでて、おひたしのような状態になったら藍もみは完了。
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揉んだ藍の葉を筵の上にバラバラに散らして、再び太陽の下で乾燥させる。ここで完全に水分をとばしたら、冬まで貯蔵しておく。
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貯蔵しておいた乾燥藍を庭先の池でもどし、工房の中に設えた藁と筵の藍床で発酵させ、蒅を作る。藍の床伏せの期間は1月〜3月末の間。
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時に70度以上もの熱を発しながら発酵が進んだ藍が蒅の状態に。たい肥のような、独特の匂いが工房いっぱいにたちこめる。
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発酵し、ほとんど葉の原形をとどめてはいないものの、すこし硬い部分が残るので石臼と杵で、繊維をすり潰すようにしてペースト状にする。
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石臼でついた蒅を団子状に丸め藍玉を作る。平たくし、真ん中にくぼみをつけるのは乾燥しやすくするため。完全に乾燥させ、藍建てまで貯蔵する。
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貯蔵しておいた藍玉と楢の木灰を使い、ぬるま湯を加えながら藍建てして染水を作る。ゆっくり発酵を促し、ようやく6月からの染めにたどり着く。