番外編:福島いわき絵のぼりとは
手仕事で豪快に描き出される
子どもの幸福への願いを込めた節句旗
戦国時代に戦場で敵味方の識別などに用いられたのぼり旗(旗指物)を起源とする絵のぼり。室町末期、端午の節句に家紋を染め抜いたのぼり旗を飾るという武家の風習があり、それを庶民も真似るようになった江戸時代以降、様々な絵が描かれるようになり“絵のぼり”として発達した。男児の強く健やかな成長を願って勇壮な武者の絵柄が多く描かれたことから“武者のぼり”とも呼ばれる。また、立身出世を表す「鯉の滝登り」が描かれた絵のぼりは、後に吹流しに変化して現在の“鯉のぼり”へと発展したとされている。
江戸前期に磐城平藩(現在の福島県浜通り南部)を治めた3代藩主・内藤義概(ないとうよしむね)は、俳句や和歌に通じた風流人としても知られ、端午の節句には絵のぼりで町を華やかに飾ることを奨励したという。そのため福島県いわき市一帯では、古くから主に染物屋によって絵のぼりの製作が盛んに行われ、端午の節句に絵のぼりを立てる風習が根付いて来た。現在では、男児が生まれた祝いとして、初節句に母方の家族から家紋や名前を入れた絵のぼりを贈るのが習わしとなっている。
時代とともに端午の節句に絵のぼりを飾る家庭は少なくなり、手仕事で絵のぼりをつくる職人は全国的にも貴重な存在となってきているが、いわき市では今なお伝統的な手描きの技術を受け継ぐ職人が、製作を続けている。平成9(1997)年には福島県指定伝統工芸品に選出された。職人たちの卓越した技と努力によって、勇ましく色鮮やかな絵のぼりが青空にはためく、いわきならではの5月の風景が大切に守られている。
いわき絵のぼり吉田
- 住所:
- 福島県いわき市泉町滝尻字根ノ町73
- 電話:
- 0246−96−5506
- ホームページ:
- http://www.musyae.com
【撮影協力】
石川紋店
- 住所:
- 福島県いわき市平上片寄字堂ノ作31
- 電話:
- 0246−34−6681