埋もれ木細工とは
地元で採掘された太古の埋れ木で
作り出される仙台独自の工芸品
“埋もれ木”は、およそ500万年前に地中に埋まった樹木が炭化して化石のようになったもの。埋もれ木細工は、そんな太古の貴重な埋もれ木を使って作られる仙台ならではの伝統工芸品だ。江戸時代に伊達藩の下級武士が埋もれ木を見つけ、内職として皿などを作ったのがはじまりとされている。明治後期~大正期に家庭用燃料として八木山(仙台市太白区)一帯などで亜炭の採掘がさかんになると、同じ地層から埋もれ木が豊富に掘り出され、職人が増えて技術も磨かれていったという。しかし、家庭の燃料として石油が取って代わり、昭和30年代以降に亜炭採掘は幕を閉じ、亜炭の副産物だった埋もれ木も採れなくなってしまった。現在では、ただ一人となった埋もれ木細工職人が、数十年前に蓄えておいた材料で製作を続け、その伝統を今に伝え、守っている。
埋もれ木細工は、ナタで形を切り出しノミでくりぬく“刳物(くりもの)”の技法で作られ、“雅(が)”と呼ばれるざらっとした埋もれ木そのものの風合いを一部に残すのが特徴。“拭漆(ふきうるし)”で深く美しい艶を出す。この全国的にも珍しい工芸品を絶やさぬよう、仙台市の助成により2012年に新しく弟子が迎えられた。歴史ある埋もれ木細工を残していくために、伝統の技が次世代へ受け継がれようとしている。