「手とてとテ」の金沢視察レポート【その3】
次に伺ったのは、『金沢クラフトビジネス創造機構』。
こちらは、平成21年にユネスコのクラフト創造都市に認定された金沢市の工芸に関わる機関として、“クラフトのビジネス化”に向けた事業展開や販路拡大、情報発信を強化するために創設されました。
デザインディレクターの飯尾豊さんによると、「金沢の工芸は、加賀藩主の甲冑・馬具などに細工を施す御細工所(おさいくしょ)で培われた技を受け継いでいる」とのこと。
工芸的技法で豪華な細工・装飾を加える“加飾(かしょく)”の伝統が金沢にはあり、そのために工芸品が普段の生活からは離れた、美術作品のようにとらえられてしまう側面もあると言います。
そこで、現代の暮らしの中に取り入れられる実用的な“生活工芸”という、金沢の工芸品の新しいブランディング構築を進めているのだそうです。
地元の21世紀美術館で展示を行う「生活工芸プロジェクト」のほか、金沢の新たなつくり手たちを紹介する展示会「生活工芸/金沢」を東京・代官山でも開催。
さらに21世紀美術館のほど近くに、「生活工芸展プロジェクト」から派生した『shop labo モノトヒト』も誕生しています。
町家を再生してつくられた『モノトヒト』の素敵な店内には大・小2つの空間が。
大きめのスペースでは“90days shop”として有名ショップや人気デザイナーらが3ヵ月ごとに展示・販売を、小さめのほうは“60days labo”として地元のつくり手が1ヵ月ごとに展示を行っているそうです。
“生活工芸”を浸透させていくには、「地元の人たちにこそ、もっと工芸品やものづくりに関心を持ってもらわなければ」と熱く語る飯尾さん。小学生からお年寄りまで幅広い層の市民が選んだお気に入りの工芸品を展示する「100人×100品展」などの仕掛人としても活躍されています。
そうしたイベントを通して、「地元の人が工芸品を購入する機会が増え、観光客に向いていたお店の意識も変わりつつある」とのことでした。(つづく)