玉虫塗とは

玉虫塗とは

伝統的技法と近代技術が出会い
漆器の可能性を広げた仙台生まれの漆芸

漆器は高価で手入れが大変。伝統工芸ならなおさら日常使いには向かないと思っている人も多いのではないだろうか。
そんな人にこそ使ってほしい漆器が「玉虫塗」。鮮やかな色漆と光沢が特徴の仙台を代表する工芸品だ。
手に取るとよくわかるが、漆の下から照り返すように銀粉が浮かび上がるため、光の加減で色合いが微妙に変わる。その豊麗な色調がタマムシの羽根に似ていることからこの名が付けられたという。
玉虫塗の魅力は、美しい色合いだけではない。現代のライフスタイルや洋風の空間にも違和感なくフィットするモダンなシルエット。和食器だけでなく、サラダボウルやボールペン、ワインスタンドなど、商品展開も驚くほど多彩だ。しかもどれも比較的手が届く価格帯。こうしたひとつひとつの特色は、その時々の暮らし、使い手に寄り添いながら独特の発展を遂げてきた、玉虫塗のルーツへとつながっている。
そもそも玉虫塗は、昭和7(1932)年、国の初めての試みとして仙台に設置された商工省工藝指導所で、輸出できる商品を作るために開発された新技法だ。漆の色は通常「顔料」を使うため、性質上色が沈んで暗くなりがち。指導所では、海外の生活にも馴染むよう試行錯誤を重ね、「銀粉」を撒き、その上から「染料」を加えた透明な漆を吹きつけて仕上げるという新技法を編み出した。この着想を取り入れることで漆の下から銀色が透過し、明るくクリアな色合いと輝きを生み出すことができるのだという。
色漆の華やかさと、工芸指導所のもたらした近代デザインの形態美は、昭和14(1939)年に玉虫塗の特許実施を得た現・東北工芸製作所に引き継がれ、国内外へ向けたさまざまな商品を製作。昭和60(1985)年には、宮城県の伝統的工芸品の指定を受ける。創業80年を迎えた現在も、伝統的な品々を作る一方で、新しいものづくりを探求する姿勢は変わっていない。2011年には、「戦国BASARA」「ジョジョの奇妙な冒険」など、話題のアニメとコラボレーションした商品を発表。震災後は国内外のデザイナーを起用した海外向けの新シリーズ「Touch Classic」を展開し注目を集めた。
伝統技を守りながらも、使い手の暮らしを見つめながら進化してきた玉虫塗。工藝指導所のベンチャースピリットを脈々と受け継ぐ作り手たちの「使う工芸」「時代に合ったものづくり」へのこだわりが、これからも仙台から世界に向けて、新しい用の美を生み出していくのだろう。

【取材協力】

東北工芸製作所

住所:
宮城県仙台市青葉区上杉3-3-20
電話:
022-222-5401
営業時間:10:00 ~ 18:00
休日:日曜日・祝日・第2、第4土曜日

ホームページ: http:www.t-kogei.co.jp