仙台出身デザイナーによる
伝統工芸のニュープロダクト
国内外で活躍する仙台出身のデザイナーと玉虫塗が融合したプロダクトが生まれました。
デザイナーならではの視点によって開拓された伝統工芸の新たな魅力を、
仙台・宮城の伝統工芸の新たな展開として発信していきます。

インテリア&空間デザイナー

尾形釿一


photography:Sadao Hotta © Sadao Hotta

「OGATAInc.の代表作でもある『ビーンスツール』は、座面に現れる5ヶ所の年輪もデザインとして特徴高く、その年輪にも発想をリンクさせ、あえて大きな木目を仙台堆朱の技法で模様を彫り、伝統技術を革新的に表現しました。木目模様や堆黒のデザインは、既存製品への汎用も意識したものです。『玉虫塗 Wooden tie ネックレス』は、これまでの東北工芸さんのラインナップには無い尾方釿一らしいデザインに玉虫塗りの技術を施し、老若男女、そして国際的にも使用できる様な小物を基軸に考えました。伝統工芸品という視点からではなく、伝統技術を際立ったアクセサリーに起用することで、その物が人から人へ伝わり、贈答品としての利用が多い中、自分の為に求めて貰える事も意識しました。実用販売としては小型の無地タイプを企画中です。」

Profile

OGATAInc.(有限会社オガタ)代表兼デザイナー。仙台市郊外の森の中にアトリエを構え、オリジナル家具のデザイン・製作、店舗設計、大型店舗などのデザイン監修や住宅設計・施工など、多岐にわたり活動を行う。自社製作の家具には全てストーリーがあり、人々の意識を啓発し、触れることで固定概念を覆すような作品を作り出している。また、常に独自性を追究した実用的且つ斬新なデザイン、ディテールにもこだわった緻密なデザイン加工は、その完成度の高さと精巧な作りから国内外で高い評価を得ている。(OGATAInc. profileより)
http://www.ogata-japan.com/

  • 玉虫塗Wooden tie ネックレス

    木製のネックレス(アクセサリー)。これまでの玉虫塗製品にはなかった形態に、玉虫塗と拭き漆の技術を施したインパクトのある作品。本体・ケヤキ材、またはオーク材/塗装面・玉虫塗及び、ウレタン塗装。 photo©Masayoshi Harabuchi

  • BEAN STOOL× SENDAI TSUISHU

    デザインとしての木目模様を仙台堆朱で施すことで、伝統工芸のしつらえを現代的に活用した。フォトジェニックと称される形体の『ビーンスツール』に施すことで、伝統技術の革新的な使用を強調し、次世代への継承のへ思いも加味。本体・集成材、鉄(脚部)/塗装面・カシュー塗装。photo©Masayoshi Harabuchi

  • BEAN STOOL× SENDAI TSUIKOKU

    伝統的な仙台堆朱の技法を、黒と白の塗りにより堆黒という現代風の表現を行った。海外展開や次世代を意識し、伝統的な色材と技法をモダンに展開。本体・集成材、鉄(脚部)~~。本体・集成材、鉄(脚部)/塗装面・カシュー塗装。photo©Masayoshi Harabuchi

デザイナー

木村浩一郎

「今まで不可能であった“極限の美への可能性を追求すること”が、伝統工芸のダイナミズムではないでしょうか。工芸品は美術であり、美術で表現できないものは技術で生み出す。新しい本物というか、これまで作ることができなかった感覚というものを意識して作りました。
今回の作品は仙台で培われてきた伝統技術と様々な交流で生まれたハイテクノロジーとの融合でおこった化学変化を貧欲なまでに新しい作品づくりに昇華させ、美という新しい価値観を独創的に生み出すことをテーマにしました。そして、伝統があるから、未来が生まれるということを表現したいと考えています。」

Profile

「koichirokimura」、「art・craft japan」デザイナー。エレガントでバイオレンスなアート性から現代アヴァンギャルドデザインを代表する一人と国際的評価を受ける。400年にわたる家業の漆塗り技術とハイテクノロジーとの融合で起こった化学変化を作品作りに昇華させ、独創的なアート作品を創造。漆塗りを生かしたテーブルウェアをはじめ、アート、プロダクト、空間からハイテクに至るまでその作品は多岐にわたり、国内外多くのプロジェクトを行なっている。
http://www.koichiro-kimura.com/

  • SENDAI wine cup 「trinity」

    「super future」がコンセプトのワインカップ。仙台が持つ品格、躍動感、ダイナミズム、政宗公のイメージである「伝統-革新」、「東洋-西洋」が融合した美意識を、光と影で表現。本体・アルミ切削加工/表面塗装・玉虫ブラック

  • Flower vase「fusion」

    今、世界でテロや戦争など、様々な問題が起こっている、そんな事が融けて一つになってしまえばいいという思いをコンセプトにした花鉢。温もりが感じられる艶やかなフォルム。本体・FRP/表面塗装・玉虫ブラック

  • High table「sukiya」

    日本伝統の数寄屋様式を現代的に表現した。現代美術及び、デザインのミュージアムの模型として発表。側面のピラミッドに玉虫塗を施した、シャープかつアバンギャルドなデザイン。本体・アクリル/表面塗装・玉虫ブラック

東北工芸製作所・工場長

松川泰勝

「今回の作品は普段製作している製品とは異なるプロトタイプということもあり、新しいことへの挑戦ばかりでした。尾方さんのネクタイでは拭き漆のグラデーションと玉虫塗のコントラストを美しく見せる点、木村さんのワインカップではエッジのシャープさ、曲面を美しく見せる点など、それぞれのイメージを再現するため、工程を詰め、治具を製作し、塗りの見極めが大変でしたね。しかし、普段できないことに今回のプロトタイプ製作という機会をいただいたことで、挑戦することができました。様々な可能性を知ることができました。」

Profile

昭和8(1933)年に東北工芸製作所として設立。昭和10(1935)年に玉虫塗の特許実施権を引き継がれた後、国内外へ向けた様々な商品を製作。昭和60(1985)年に宮城県伝統的工芸品の指定を受けた後、献上品や記念品、贈答用の需要をはじめ、新商品の開発やドイツへのプロモーションなど、伝統を守りながらも、使い手の暮らしを見つめながら進化し続けている。工場長の松川泰勝は平成24年度宮城県卓越技能者を受賞した。
http://www.t-kogei.co.jp/